ニセコ・ルスツ高騰の現実と、雪国に生まれた者の本音
雪国・北海道。冬になるとあたり一面が白い世界となり、空気は冷たく、道路は固く凍り、息を吸えば胸が痛くなる。そんな厳しい冬を楽しむ術として、北海道には昔からスキー文化が根付いていた。
しかし、最近はそのスキーが「気軽なスポーツ」ではなくなりつつある。
後志管内のニセコ地域は毎年のように外国人観光客であふれ、世界的なスキーリゾートとして地位を確立した。その反面、道民にとってのスキーの敷居は、年々高くなっているように感じる。
今年のニュースを見て、私は思わずため息をついた。
ニセコ4スキー場共通の大人1日券が、ついに1万2,000円になったという。
昨年より1,500円の値上げだ。
そして、もっと驚いたのはルスツリゾート。
なんと 1日券が1万6,200円。
もはや「気軽に滑りに行こう」なんて言える金額ではない。
私の家からルスツリゾートまでは車で30分。
昔なら「近いからこそ」と何度も通える距離だったが、今はそうはいかない。
1日券を買うだけで財布が軽くなる。
そこにレンタル代や装備代、食事代まで加われば、ちょっとした旅行並みだ。
ニセコを変えた“世界化”と、地元民が感じる疎外感
ニセコが世界的なスキーリゾートに成長した理由は、間違いなく「外国人観光客」の存在だ。
特にオーストラリア、アメリカ、ヨーロッパのスキーヤー・スノーボーダーから絶大な人気を誇り、近年はアジア圏の富裕層にも支持されている。
世界中の旅行客が集まることで、
- ホテルの建設
- レストランやカフェのオープン
- 外資系企業の投資
- 高級マンションの建築
など、街は活気づき、雇用も増えた。
だが、その一方で、
「地元民が楽しめるスキー場ではなくなった」
という声も確かに聞こえてくる。
スキー場の料金も、外国人富裕層に合わせた価格設定。
道民割引や地域優待があるとはいえ、それでも高い。
毎年行くどころか、「年に一度でも迷う」レベルの金額になってしまった。
ニセコが輝くほど、地元民が遠ざかってしまう。
この皮肉な状況を、寂しく感じる北海道民は多いはずだ。
今からスキー用品を揃えたら、いったいいくらかかるのか?
スキー場の料金だけではない。
今からスキーを始めようとすると、装備代も無視できない。
たとえば新品で揃えるとなると――
- スキー板 3〜10万円
- ブーツ 2〜6万円
- ストック 5,000円〜
- ウエア上下 2〜5万円
- ゴーグル・手袋・帽子など 1〜2万円
合計すると 10万〜20万円 は軽く飛ぶ。
初心者におすすめと言われるセットでも、結局大きな出費になってしまう。
昔のように“アザラシの皮”を貼ったスキー板があった時代、スキーはもっと身近で、もっと生活に近い存在だった。それが今では、立派な趣味、ある意味「高級レジャー」になってしまったのだ。
「手軽に始められるスポーツ」から
「資金力のある人だけが楽しめるスポーツ」
に変わりつつあるのが現実である。
スキー教育と“裏山スキー”という懐かしい記憶
私が中学まで過ごした頃、体育の授業には当然のようにスキーがあった。
スキー場へ行くのではなく、
裏山の雪を踏み固めて“自作のゲレンデ”で滑る。
- 先生が見本を見せる
- 生徒が後に続く
- 転んでも笑って起き上がる
- 斜面の角度は気分次第
道具もシンプルで、雪も自然のまま。
あれが北海道の“本来のスキー”の姿だった気がする。
スキー場に行くという文化は、地域や家庭によって違った。
私の家ではそんな余裕はなく、裏山のスキーで十分楽しく、満足していた。
だから今、ニセコやルスツのニュースを見ると、
時代の変化を強く感じてしまう。
老後のいま、スキーより大切な“冬の楽しみ”
65歳になった今。
パーキンソン病を抱え、無職の年金生活。
スキーは夢のまた夢になってしまった。
身体も資金も、若い頃のようにはいかない。
もし今からスキーを始めたら、体力面も不安が大きい。
では冬をどう楽しむのか?
私が出した答えは、意外とシンプルだ。
「暖かい部屋で、アイスクリームを食べる。」
昔は考えられなかったが、今ではこれが最高の贅沢だ。
北海道には美味しいアイスがたくさんある。
- 雪印パーラー
- ホリ
- 北海道プレミアムミルク
- 地元のジェラート
冬に暖かい部屋でアイスを食べる――
これが北海道の醍醐味でもある。
スキーを楽しめない代わりに、
“ささやかな幸せ”を楽しむ方法はいくらでもあるのだ。
高騰するスキー文化と、これからの北海道
ニセコのスキー場は世界ブランドとして伸び続けるだろう。
ルスツも含め、外国人観光客による経済効果は大きい。
しかし同時に、
“地元の人間が楽しめるスポーツとしてのスキー”
が遠くなってしまったことを、少し寂しく感じてしまう。
ただ、それでも北海道の冬は素晴らしい。
スキーができなくても、楽しめるものはたくさんある。
- 冬の散歩
- 温泉
- 料理
- 景色
- 冬の星空
- 家で過ごす静かな時間
年齢を重ねても、病気を抱えていても、
北海道の冬は“別の楽しみ方”が必ず見つかる。
高級化するスキー場のニュースに驚きつつ、
私は今日も、暖かい部屋でアイスクリームを食べながら、
昔の裏山スキーを思い出している。


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